思い切り試してこじ開けるようなお芝居に挑戦したいんです

舞台は2014年『ジャンヌ・ダルク』以来ですが、7年ぶりの出演はいかがですか?

7年ぶりとなると、初めてと同じですよね(笑)。 もちろん、7年前の舞台は自分を作ってくれた作品として残ってます。でもほとんどゼロからのスタートだと思っていて。 経験豊富な方々しかいないので、それくらいの気持ちで挑まないと最初の段階から出遅れるな、と覚悟しています。 ご指導いただきながら、やっていきたいと思ってますね。

他の映像作品とは全く違うお芝居が必要そうな印象がありますが、有村さんの実感としては?

違うと思います、やっぱり。 「引き」「寄り」みたいなカット割りがあるわけではないですし、常に360度見られているので。 少し不安もありますが、ボイトレなどの準備を少しずつ積み重ねて、自信をつけながらこれから稽古に入れたらいいですね。(※取材時は稽古入り前)

表現ということでは映画やドラマと変わりはないのですが、舞台には、自分の基礎だったり根本の部分を叩き直してもらえる場所なのかなっていう漠然としたイメージがあって。 自分もまだ修行中なので、挑戦して、そういったものを思う存分試して、こじ開けることができるような場にできればと思います。 だからきっと他の役者さんたちも、定期的に舞台をやって、自分の力を確かめているというか。

定期的に、リセットするような形で舞台に立たれる方って多いですよね。

舞台をやっている瞬間は、変な邪念みたいなものがなくなるんだと思います。 やっぱりドラマや映画は、カットがどうなるとか「この角度でセリフを言ってほしい」みたいなことがついてくるから。 舞台の場合は、ただただシンプルにお芝居というものを突き詰める時間、にできる気がします。

一度舞台に立つとやみつきになる、という役者さんも多い一方、すべてがさらけ出されて怖いという方もいらっしゃいますが、前回の経験ではどちらでした?

それが、初めてだったけどすごく楽しかったんです。 始まる前にいろんな方から「舞台は毎日お客さんの反応が違うから面白いよ」って伺ってはいましたが、正直あまりピンと来てなくて。 でも舞台に立つと「こういうことか」ってわかった気がしました。 毎日同じことをしているはずなのに、地方によっても全然違いますし、同じ場所でもその日によって反応が変わって。 「今日はどんな感じかな」っていうのが本当に楽しかったです。 また舞台はお稽古期間もありますし、みんなで作っているっていう感覚があって。それも楽しかったですね。

今回の舞台を演出される加藤拓也さんとは同じ1993年生まれですが、同い年の方に演出を受けるのはきっと初めてですよね。

そうですね。たくさん刺激をいただけると思うので、すっごく楽しみです。 基本的に年齢はあまり関係ないですが、リスペクトを込めてお話できるといいなと思います。

演目となる『友達』は安部公房の戯曲ですけど、安部公房が亡くなった年は加藤さんと有村さんの生まれ年なんですよね。

はい。だから初演当時のことはわからないですけど、当時は演劇界の中でも、不穏な空気を持った作品ということで話題になったみたいで。 孤独な人間に対する見えない圧みたいなものが込められている作品なので、この演目を再演するっていうことで、演劇ファンの方々はざわざわされているかなとも思って。 見る方によってはすごいしんどかったりすることもあると思いますし、個人的には、刺激が強い作品の雰囲気を大事にできればいいなと思いつつ、実際に始まってみないとどうなるか想像できないところもあります。

舞台の期間は体力勝負だと伺いますけど、疲れ切って帰った時でも絶対に行う美容ルーティンはありますか。

最近はパックです!シートパックをしている間に髪を乾かしたりボディクリーム塗ったりしていると、5分10分経つので。 パック自体にそんなにこだわりはないんですけど、市販の手頃なものから、ちょっと日焼けをした時用の美白パックだったり、いろいろ家にあって。 その時の気分で使っています。こだわりとしては、10分以上はやらない、ということですね。

長時間つけておくのは逆効果、って言いますもんね。食生活については、舞台期間中だと自炊は難しいですよね。

食事も含めての体調管理だと思っているので、その日の疲れ具合とかによって栄養素を考えたりして、なるべく自炊するつもりです。 食事以外でも、ビタミン系のサプリメントや青汁を摂るようにしたりしています。

最後に、プライベートについて少しだけ。有村さんは25歳の頃から茶道を趣味にされていると伺ったのですが、何かきっかけが?

高校生の頃に興味を持ったんですけど、特に理由があるわけじゃないんですよね。 「茶道、やってみたいなー、なんか良さそう」みたいな(笑)。 このお仕事を始めて余計に、茶道に対する憧れが出てきて。 時代劇に生かせればいいな、というのも思いました。

所作とか、役立ちそうですね。

はい。お稽古する時は着物ではないのですが、実際に始めてみるとわかることがたくさんあって。 考え方とか向き合い方とか、お芝居に共通することが多いんですよね。 たとえば茶道の所作は、頭で覚えるんじゃなくて、体で覚える感覚なんです。 お芝居もそうで、頭でいくら考えてたって、動いてみないとわからないし、頭でっかちになるだけで。 その瞬間、自分がどう思ってどう返すか、っていうラリーでもあるので。 とにかく頭で考えない、っていうことがお芝居のベースにもつながってる感じがするんです。 精神統一も必要なので(笑)、集中する力を補えたり。 頭からつま先、指先まで意識して動くので、それもお芝居に役立つなぁと思います。

最近も通えています?

以前は月に1回は通いたい、と思っていたんですけど、コロナ禍になってからはなかなか行けてなくて。 先生もご高齢の方なので、いろんな方にお会いする自分が出入りするのはちょっと…と思って行けずにいるんですけど。 また状況が良くなったら通いたいですね。

プロフィール

1993年2月13日、兵庫県生まれ。2010年に『ハガネの女』でドラマに初出演。 NHK連続テレビ小説『あまちゃん』で注目され『ひよっこ』ではヒロインに。 主な出演作はドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』『中学聖日記』、映画『映画 ビリギャル』『ナラタージュ』『花束みたいな恋をした』『るろうに剣心最終章 The Beginning』など。2022年に映画『前科者』公開予定。

お知らせ

安部公房の傑作戯曲で1967年の初演時にも話題となった舞台『友達』に出演。 共演は鈴木浩介、林遣都、浅野和之、キムラ緑子、山崎一など。 演出は「劇団た組」主宰者であり、ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』『死にたい夜にかぎって』脚本、『カフカの東京絶望日記』演出、舞台『誰にも知られず死ぬ朝』作・演出などで知られる加藤拓也。9月3日〜26日に新国立劇場 小劇場にて東京公演、10月2日〜10月10日にサンケイホールブリーゼにて大阪公演を予定。 詳細はsiscompany.com/tomodachi/

構成/菅野美咲(本誌) 取材・文/江尻亜由子 撮影/新田桂一(ota office) ヘアメイク/尾曲いずみ(STORM) スタイリング/瀬川結美子
トップス60500円、パンツ35200(ともにエンフォルドTEL/03-6730-9191) リング37400円(ASAMI FUJIKAWA TEL/03-6884-1372)